「自然観察会の目的」
自然から知識や感動をもらい、安心・自信・共感性を育成しましょう。
生物を観察したり、採集したり、解説を聞いたりして、「できた、わかった」という経験は、大きな自信と生きた知識をもたらし、自然について考えるための基礎となります。
また、知識の習得や感動することにより人は生きる力を養います。
生き物を理解し関心を持つことで、生き物と友達になれるでしょう。生き物の立場で考えられるようになることで生き物に対する共感性もはぐくまれます。
みんなで観察することにより理解と感動が共有され、人同士の共感性も涵養されます。
人の先祖は自然の中で生活して進化してきたので、自然と接することで精神が安定するよう(安心する)に遺伝情報に記録されています。
また、人は集団生活するために共感性(思いやりの心)を抱くように進化していて(*1)、共感性を抱くことにより精神が安定するように遺伝情報に記録されています。
自然から知識や感動をもらい、生物や人との共感性を育み、精神安定を促し、生きる力を養いましょう。
目的
1.和歌山県の自然についての知識・理解を習得し、自然と共生する思考の基礎を養う。
2.興味関心を持ち、生物観察をすることにより、積極性を培い、生きた知識を習得すると共に自信を涵養する。
3.生物観察を通して、生物との共感性を育み、生物を介在して人同士の共感性を育む。
4.自然の事象に感動することにより精神保養を促し、生きることの原動力を養う。
解説
生き物を観察し、知れば知るほどその生き物に親近感がわき、その生き方(生態)や適応の仕方(進化)に感動し、
その生き物の立場で考えられるようになります(共感性の涵養)。生き物と接して、程度の差はあるでしょうが、その生き物を理解し関心を持つことで生き物と友達になれるでしょう。
私たち人も生物です。人同士友達になることと、人と生き物が友達になることは、相手を理解するというレベルにおいては、同じ共感性の涵養だと考えられます。
共感性が涵養されれば、人同士の連帯感、生き物同士の連帯感が生まれることにより、本人に安心感が生まれ、精神保養をもたらすと考えられます。
また、みんなで観察することにより理解と感動が共有され、人同士の共感性も涵養されます。
自然の事物や現象に感動することは、精神の高揚をもたらし生きることの原動力になり、自然体験は精神安定をもたらし人を安心させます。
自然体験は、人に生理的リラックスをもたらし免疫機能改善効果が生まれ、精神保養に有効です(*2)。
生物の名前と実物の生物の体形や生態の理解が一致して、初めて生きた知識となります。
生物の生き方(生態)を知り、環境への適応の仕方(進化)を知ることで、その生物との間で共感性が増し、他人とはその生物を通して共通理解の共感が生まれます。
「共感」には、エンパシー(empathy)とシンパシー(sympathy)の意味があります。
エンパシーは「共感」と訳されることが多く、「同感」と同じ意味で、「同じように感じること、同じ考え」とされます。シンパシーは「同情」と訳され、
「他人の感情、特に苦悩、不幸などをその身になって共に感じること」とされています(*3)。同感や同情することにより、オキシトシンやセロトニンが
放出され精神安定が促進されると考えられています(*4)。
家族あるいは参加者と交流しながら、面白い、不思議な自然の事象に実際に触れる体験は、楽しみとなり、生物を介在した人との共感性を涵養し、精神保養を促します。
生物との共感性の涵養も、本人に精神保養をもたらすと考えられます。
生物について、興味関心を持ち、進んで観察したり採集したりすることは、人に積極性や開放性を育みます。自然に働きかけ実物を体験し、理解することにより得られた
「生きた知識」の習得や自分で採集できたことが自信を育み、これらのことは、特に子供にとって精神安定と精神発達をもたらします。また、自然についての知識・理解の習得は、
自然を理解し自然と共生する思考の基礎となります。
観察会において重要なことは、指導者が参加者と共に、生物を探し、発見し、観察して、その面白さや不思議さなど、参加者と共通体験し、感動を伴って共感することです。
参加している子供や大人が興味を持ち探求するように、見せ方や体験の仕方を工夫することが必要で、参加者が興味を持ち進んで探求することにより、より多くの知識の習得が可能となります。
指導者が、優れた解説を施すことにより理解が深められます。
参考資料
*1 共感革命.山極壽一.2023.河出新書
*2 自然セラピーの科学.宮崎良文.2016.初版発行.朝倉書店
あなたの子どもには自然が足りない.リチャード・ループ.2006.早川書房
*3 共感の心理学.澤田瑞也.1992.世界思想社
*4 親切は驚くほど体にいい!.デイビッド・ハミルトン.2011.飛鳥新社
セロトニン脳健康法.有田秀穂他.2009.講談社+α新書